2016年に世界鍼灸学会(WFAS)で発表した鍼灸治療を一部ご紹介します。
学会で発表したものを専門用語を使わず日本語に翻訳し直し(世界鍼灸学会は英語での口頭発表だったのです)ほとんどそのままお伝えしようと思います。
少しカタい表現も登場するかもしれませんが、日々どのような鍼灸施術を行っているかなどの、参考にしていただいて鍼灸治療を受けるキッカケのひとつにしていただければと思います。
休息をとっても、一晩寝ても、なかなか疲れが取れず、いつも疲労感を感じていて、スッキリしないけど、
それをどう表現したら適切な治療を受けられるのかも分からない。
・・・というお悩みをお伺いしたことがキッカケとなり、
東洋医学の基本的な診断に、疲労が蓄積された方の身体的な特徴を診断基準に加えて、数十人の方にご協力頂き、鍼灸治療を行い改善した症例を2016年 世界鍼灸学会(WFAS)にて発表いたしました。
~疲労が激しく、つらさを抱えているにもかかわらず、どこに症状があるかがハッキリしない時の鍼灸治療~
疲労度が強く、寝ても疲れが取れない方の特徴として、肩とウエストの後ろ部分がベッドから浮き上がっているような状態になっていることが挙げられます。
もしこのまま立ち上がると、肩は前に丸まっていて腰は反っているという、とても不自然な姿勢となってしまいます。
また、仰向けに寝ている状態では、とくにウエストの後ろの部分は、少しブリッジをしたような姿勢で、常に腰や背中の筋肉が緊張して「浮かしている状態」となり、頭では「休もう、疲れた、回復したい」と思っているにもかかわらず、からだ全体では矛盾がおきて、結果、疲れが取れない、という状態が続いてしまうのです。
こうした身体的な特徴のもうひとつの特徴として、「本人には姿勢の不調による自覚症状はない」と言うことが挙げられます。
あえて仰向けに寝てみてチェックすることで、肩やウエストの後ろが浮いていることは自覚できるんだけど、そのことで強い筋肉の「コリ」や痛みを感じたり、動けないなどの不具合を感じたりすることはないのです。
まるで、本人の意思とは関係なく、からだが勝手に緊張して筋肉が硬くなったまま、あたかもそれが「普通のからだ」のようにあり続けているという状態になってしまうのです。
こうしたことから、からだは常に緊張していて、筋肉は硬くなり、つっぱり、ベッドから浮き上がっている状態が続くものの、そのこと自体には、自覚症状を感じにくいので、それが疲労の原因だとは気づきにくく、その状態が長期にわたって続くことで、寝ても疲労が蓄積していきます。
その結果「常に、なぜかわからないけど、いつも疲れていて、からだが重く、スッキリしない、という不快症状を全身に感じている」という状態が続くのがこうした身体的特徴を持つ方の疲労症状なのです。
鍼灸治療を受けられた後の変化についてですが、施術後に皆さまがまず感じるからだの変化として「背中全体がベッドについて、力が抜けているのが分かる!」というのが大きなポイントです。
このときになって初めて「治療を受ける前は、からだがベッドから浮き上がっていて筋肉が緊張し続けていたことに気付いた」とおっしゃる方も多いです。
肩から背中全体、背中から腰まわりまでが、ペッタリとベッドについているだけではなく、ベッドに全身の体重を預けてチカラを抜きリラックスしているからだの状態を感じられると「ゆったり、伸び伸びといることができて心地いいという感覚」を得られます。
疲労が残って不快症状が続いていた時の「寝てもまた翌朝疲れてるだろうなぁ・・・」と思いながらお休みになるという不安感にも似た気持ちを取り払って、安心してお休みになれるとおっしゃっていただくこともあります。
そしてさらに、この鍼灸治療のお得なところは、治療が終わった後も持続するというところです。
治療を受けられた当日とくにそうなのですが、睡眠時間を確保して、しっかりとお休みいただくことで、人がもともと持っている「からだの回復力」が働き、からだの疲労を取り除く仕組みが活動しやすくなるので、からだ全体はリラックスして休みながら、頭は眠ることに集中できるので、矛盾(頭は休みたいのにからだは緊張している)がなくなりからだ全体がまるごと回復していくのです。
こうした鍼灸治療を香庵ではお一人お一人と向き合いながら行っております。
体質や体調は人それぞれありますが、だからこそ、おからだの状態を「情報」として共有し、からだが本来持っている回復するパワーを充分引き出して、やわらかで軽やかなコンディションを一緒に目指していきたいと考えています。
五反田の鍼灸院 香庵(かのん)
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