
【本日の目次】
入院前と退院後で変わる鍼灸治療のアプローチ

定期的に香庵へ来院されている数人の方から入院のご報告をいただきました。
皆さま、長期の入院の予定ではないようですが、やはり入院となると仕事や日常生活がストップするので心配事や不安も感じるようです。
香庵では、入院の前後の体調ケアをサポートしています。
さらに入院と退院後での香庵の体調ケアは内容を変えています。
基本的にはご本人の体質やその日の体調をみながら症状緩和へ向けた鍼灸治療を行っています。
しかし、入院が必要なお身体のケアとなると、鍼灸治療の内容も変えていく必要があるのです。
入院前・退院後も、ご本人にとっては、お身体の不調や心理的な緊張感、不安感などがあることと思います。
お身体の緊張が首や肩のコリとなって現れていたり、腰痛となって現れていることも多いです。
そのためお身体全体をゆるめるアプローチから心身の緊張をほぐしていくようなサポートを行います。
さらに入院前と退院後のお身体ケアは目的を明確にして治療内容も変えて行っていきます。
入院前は、コリや疲れを取ってスムーズな血流を促すように体調を整えます。
血管へ注入する投薬などが全身に行き渡り、薬効を最大限に活用できるようにサポートしています。
退院後は、入院生活から日常生活へ戻る大きな変化の時期と位置付けています。
復帰によって心とからだに起きる様々な不調に対して回復期のサポートをしていきます。
この記事では、とくに退院後の回復期に起きる様々な心とからだの変化にスポットを当てています。
退院直後に起きる心とからだの変化

退院後は多かれ少なかれ「しんどいな」「つらいな」と違和感や不安感や孤独感を感じることがあります。
でも、この感覚をご家族やご友人に話しても、共感を得られるのが難しいことも。
その理由は、入院生活を経験されたからこそ退院直後から一定期間感じるご本人だけの独特な感覚だから。
そのことについてあまりネット情報もないようです。
そこで今回は、退院直後に起きる心とからだの変化について、香庵でお伝えしている内容をシェアします。
入院生活や退院後の回復期を過ごす中、この情報が少しでもお役に立てたらうれしいです。
退院直後から感じる独特な感覚

退院して病院から出てすぐに感じる独特な感覚をいくつかご紹介します。
これは退院後に香庵へ回復期の鍼灸治療で来院された皆さまに共通されていたものです。
何かのご病気で入院され退院したばかりという方が、もしもこの情報によって「私以外にも同じ感覚の人がいるんだ~」と少しでも安心していただけたらうれしいです。
【退院直後から感じる独特な感覚】
・街の中の匂いをキツく感じる
(人の匂い、乗り物の中の匂い、飲食店に入店したときの室内の匂いなど)
・人の歩くスピードが速くて怖く感じる
・看板やバス・電車内の広告の色がどぎつく感じる
・社会生活に復帰できるか不安感がある
・人の話し声が早口で暴力的に感じる
・すぐに疲れる
・午後になるとだるさを感じる
・集中力が続かない
・すぐ横になりたがる
・積極的に動こうとする気力がわかない
その他、小さなお子様がいらっしゃる方や高齢の方と同居されている方、仕事で重要なお仕事を任せられている方など、退院直後からハードな日常生活にいきなり戻らなければいけない状況の方は、
・気分的な落ち込み
・周囲の方からの無理解を感じる
・イライラ感
・なんのために頑張ってるのか...とグルグル考えが止まらない
・考え事をして眠れない
・・・など、気持ちの負荷を強く感じられるケースもありました。
退院後に感じるこれらの感覚はいったいどこから来るのでしょうか。
それには理由があります。
入院生活に慣れるための人間のある能力が関係しているのです。
入院生活で身体が変化するメカニズム

入院中は起床時間から就寝時間まで決まったスケジュールで過ごします。
おおむね規則正しい生活リズムと栄養バランスが考えられた食事、1年中、暑くも寒くもない空調で安定した室温の部屋で管理された生活を送るのは、どこの病院でも共通しているのではないでしょうか。
その中で、検査や手術を受けることになるかと思います。
それ以外の時間は病室内で安静に過ごすか、リハビリを兼ねて病院の廊下内を歩くなど、治療に必要な運動を行うことになるケースが多いようです。
基本的には病院内で過ごすことになるため、清潔で落ち着いた色合いの室内でゆったり過ごすことが多いです。
入院直後までお仕事をバリバリがんばっていらした方にとっては、入院期間中、手持ち無沙汰なような暇なような時間をどう過ごしていいか分からないという気分で1日を過ごす方もいらっしゃるかもしれません。
そんな入院生活ですが、しばらくすると、その生活リズムに身体が慣れていきます。
人間には、ある環境で数日から数週間過ごすと、その環境下で生き延びられるように変化しようとする能力がもともと備わっています。
その能力のことを「順応(じゅんのう)*」といいます。
順応するチカラは、暑さや寒さなど気温の変動や登山やスキューバダイビングなどで地上との高低差が激しい場所への移動、海外旅行で時差のズレなどにも働いています。
*「適応(てきおう)」も「順応」と似ていますが、遺伝子レベルでの変化で使われる言葉でもあります。
この記事では「環境に合わせて一時的に変化する身体」に焦点を当てて「順応」としています。
安住紳一郎さんの沖縄順応エピソード

TBSアナウンサーの安住紳一郎さんによると、沖縄旅行では3日目に風邪をひきやすい、というジンクスがあるそうです。
お天気情報を見ると東京ではジャケットが必要な時期でも沖縄の気温はかなり暖かくなっているそうです。
その時季に東京から沖縄に行く旅行者は「沖縄って暑いよね♪」とウキウキモードも手伝って薄着の人が多いのだそうです。
確かに東京から沖縄に到着して初日と2日目は「さすが沖縄!暖かい~!」と感じるそうです。
ところが3日目になると、沖縄の気候に自分の身体が慣れてしまって「さほど暑くもないし、暖かくすらない!むしろ寒い!!!」と感じるようになるそうです。
数年前のラジオで安住紳一郎さんが「沖縄に行って風邪を引いて東京へ戻ってきた」と話されていました。
順応する能力は、たった3日間でも、その環境に身体を慣れさせて生き延びさせようと働いてくれているということなのですね。
回復のための「病み上がり」という期間

退院する日が決まり、晴れて退院の日。
日常生活を取り戻すぞ~!と感じたり、仕事に復帰するぞ~!と気合を入れようとされる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、今度は、退院後の日常生活への順応が必要です。
しかも、入院生活と比べて日常生活は気力と体力の消耗が増えやすいものです。
日常生活は、とても忙しく、音や色など五感に入ってくる刺激も強いものが多く、生活リズムも乱れやすい環境であることがほとんどです。
そこに心とからだを合わせていく(順応)ためには、その生活リズムに慣れる期間が必要です。
昔はこういうとき「病み上がり」という言葉を使って、相手を気遣う習慣がありました。
病気から回復して日常生活でがんばっている人に対して、
「あなたは病み上がりなんだから、そんな無理するもんじゃないよ。」
「休み休みやりなさい。」
「病み上がりだから早く寝なさい」
・・・など、言葉をかけていたわってくれる年配の人や近所のご隠居さんがいたのだと思います。
もしかしたら医療技術が今ほど発達していなかった時代、病を克服したばかりの人が無理した結果、また病気をぶり返してしまうとさらに大きな病になりかねなかったからという理由もあるかもしれません。
現代では忘れられた「病み上がり」
現代は昔よりも医療技術が発達したとはいえ、私たちの心とからだは昔の人とほぼ同じ構造なんですよね。
今だって、病から回復したからと無理したら、体調を崩してしまうことに変わりはありません。
それなのに現代では「病み上がり」の心とからだの状態があることをまるでなかったかのように働く(働かせる)ところがほとんどです☆
例えば、インフルエンザやコロナ感染症の時も、政府で決められた「療養期間が終了」したら通常業務を行わななければならないという方がほとんどだったのではないかと思います。
香庵では「療養期間が終了」したものの、だるさが取れない、よく眠れない、疲れが取れない、仕事の集中力が続かない...などの症状でお悩みの方からのお問い合わせが一時期とても多かったです。
現代の「病み上がり」期間の過ごし方

現代に生きる私たちの心とからだにも「病み上がり」の期間が必要です。
また「病み上がり」は退院後、日常の生活リズムへ慣らしていく期間ともリンクします。
退院後の日常生活を一気に取り戻そうとすると、疲労感やだるさを強く感じることも多いです。
お天気や気温、その日の出来事(すべてが心とからだの刺激になります)などによって体調は日々変化します。それは健康な人も同じなのですが、退院直後の方にとっては日々の体調の変化は大きいし影響も強く受けやすいです。
このような退院後の体調の変化を不安に感じる方も多いです。
そんな時の対処として「病み上がり」の期間を上手に活用していただきたいです。
「病み上がり」期間に体調の変化に不安を感じた時は、ご自身の順応の能力がちゃんと機能している証拠です。
ご自身のおからだ様(心とからだ)*が「どうやって慣らしていけばいいのかな!?(`・ω・´)」と試運転しているんだなぁ~と捉えてみてください。
*香庵では心とからだを総称しておからだ様とお呼びしています。
入院中に投薬や手術など、お身体には「何かしらの変化」を受けられたはずです。
退院後、その「新しい自分の身体」とうまく付き合ってゆくための身体の使い方を試運転中なのです。
おからだ様が試運転中だからあっちに行ったりこっちに行ったり体調の変化がゆらゆらするのだな、ということを理解すると、ご自身のおからだ様(心とからだ)の健気ながんばりに愛おしさを感じやすいと思います。
ご自身のおからだ様(心とからだ)へ愛おしさを感じている最中は、同時に不安感を感じることは、人間、できないようになっています(笑)
ということは......
ご自身のおからだ様(心とからだ)へ愛おしさを感じたもん勝ちです♪ヾ(*´∀`*)
愛おしさを感じると脳からオキシトシンなどのハッピーホルモンが出て回復力が上がるので一石二鳥ですよ~!
この試運転中の反応は、心とからだを日常生活モードにチューニングしようとがんばってくれている証拠なのでご自身の心とからだを優しくいたわってあげてくださいね♪
もちろん疲労感やだるさを強く感じるような日は、早めに就寝することも忘れずに(*´▽`*)
回復期の体調の不安定さを乗り越えるために

この記事での回復期とは、すでに病気の状態は抜けたけど、気力と体力が本調子に戻るまでに必要な時間のことです。
退院後の日常生活は、ちょっとした負荷にも体調が不安定になりやすい時期です。
それでもご自身の心とからだは日常生活に順応しようと「試運転」しながらがんばってくれています。
ご自身の心とからだのがんばりに対して愛おしさ、いっぱい感じてみてくださいね!
世界でたった1つだけのご自身の心とからだを、優しくいたわりながら過ごしていただきたいです。
香庵では、退院後の回復期のケアをサポートする鍼灸治療を行っております。
ご自身の心とからだの気力・体力を取り戻しながら血液循環を促してエネルギーを全身の隅々まで届けやすくなるようサポートしてまいります。
退院後のお身体の症状にお悩みの方はぜひ一度ご相談くださいませ。
ご予約はお電話にて承っております。
五反田の鍼灸院 香庵(かのん)について

当院の院長、加藤は国家資格を取得しております
・鍼師(2000年~)
・灸師(2000年~)
・あん摩マッサージ指圧師(2000年~)
また、第43回日本伝統鍼灸学会学術大会、世界鍼灸学会連合会学術大会WFASなどにて発表経験もあり、研究成果の発表も行っております。
場所:東京都品川区大崎5-4-7ハイツ五反田203号
五反田駅をご利用の方
JR山手線・都営浅草線 五反田駅西口改札 徒歩5~7分(約500m)