症状について
4日前に突然左肩関節の前側が痛くなり、横向きで寝るときに左を下にして寝ることができない。普段の生活で痛むというよりも、押すと痛みを感じるのと、腕を大きく回すとある角度で痛みが強くなる。
痛みの原因が思い当たらず、とくに骨には異常がないため、様子を見ていたが4日経っても痛みが変わらなかったため来院されたとのこと。
香庵の診断・分析
伝統芸能のお仕事をされており、そのうごきに関連した痛みの可能性も考えたけれど思い当たるフシはなく、ここ1ヶ月ほどを振り返っても、地方巡業などでの移動時の無理な姿勢や重いバッグを持つなどの首や肩を含め、腕にかかる負荷も特になかったとのことでした。
症状は肘を曲げると「力こぶ」ができる筋肉(上腕二頭筋)のスジが肩関節の前側にあり、そこを押すと痛みがあるとのこと。
腕を伸ばした状態で側面から上へ上げていく動き(外転)では60~120°範囲内で痛みが現れ、それ以外の角度では痛みが消えました。
臨床的には上腕二頭筋の腱や、腱を包む組織が腕の骨にある溝のところで滑りが悪くなったため、摩擦による炎症が起きたと分析し、上腕二頭筋の腱鞘炎(長頭腱炎)と診断しました。
施術内容・経過
仰向けで左の肩関節周囲を触診すると、患部の鋭い痛みとともに肩や左鎖骨下周辺にも痛みをかばうためか筋肉が硬くなっていました。
脈診(手首の脈で全身のエネルギーバランスの過不足を診断する方法)と腹診(みぞおちからお腹全体で全身のエネルギーバランスの過不足を診断する方法)でも痛みのためにからだ全身の筋肉が緊張しているサインが出ていました。
香庵の鍼灸治療では伝統的な鍼灸の治療方法で全身に張り巡らされているとされている経絡(けいらく)による診断・治療方法を採用しています。
経絡的診断を行ったところ、首から肩の後ろと背中などの患部以外の経絡にもコリやひきつれ感が現れていたので、まずはそれぞれの経絡上のツボを使ってゆるめていきました。
すると患部の左肩全面を通る経絡のみが治療領域として現れました。
ここからやっと、上腕二頭筋の腱鞘炎(長頭腱炎)への直接的な鍼灸治療がスタートできました。
経絡上のツボを1ヶ所選び、細い鍼1本で皮ふに4mmの深さ(浅さ?)で刺激した後、左腕を動かしていただくと「痛みが軽減したがまだ痛みがある」とのこと。
さらにもう1ヶ所ツボを選び、同じように鍼の刺激をして再び左腕を動かしてみると「どの角度でも痛みなく腕を動かすことができる」とのことで、1回目の施術は終了しました。
翌週、来院されたときはまた痛みが戻ったとのことで同じように施術をして腕を動かしていただくと、「痛みはないが引っかかるような感じで動かしづらい」とのこと。
首と肩の境目を触診してみると、背骨の左際の皮ふのすぐ下の筋肉に硬く引きつれているところがあり背骨全体のスムーズな動きと左肩から腕にかけての筋肉の連動したうごきを制限していました。
直接そこに鍼で刺激をして、ゆるんだのを確認してから再び腕を動かすと「前回の施術後よりももっと軽く腕が動かせて、左肩の前の痛みは全くなくなった!」とのこと。
治療の振り返り・院長より
気が付くと左肩の前側が痛くなっていて、4日間経っても痛みが引かず、少し不安なられたというK様。夜10時近くに治療室の留守番電話にご予約のメッセージをいただきました。
K様の奥様もお仕事をされていらっしゃるため、ご夫婦で連絡を取り合い家事を分担されていらっしゃるそうですが「スマートフォンでの頻繁なやり取りや手先を使う細かな作業で下を向いた姿勢が続いたことが原因だったかもしれない。」と振り返られたK様。
負荷のかかる姿勢が続きすぎたことで長頭腱炎という症状を現したのではないかと考えられました。
痛み自体は2回で取れたものの、首や肩のコリを自覚されたことと再発防止のために来院され、”痛みを取る”という鍼灸治療から、”首や肩をゆるめて本来の動きを取り戻す”鍼灸治療へ治療内容の質を上げていきました。同時に首肩周りをほぐすストレッチのレッスンもしました。
楽屋では「こっそり」セルフケアを続けてみることをお約束してくださったK様。(笑)
鍼灸治療というカタチで伝統芸能の素晴らしい舞台をサポートできれば私もとてもうれしいです!
いつもご利用ありがとうございます。
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