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【東京発】噛みしめ治療 事故につながりかねない施術を受けた方からのご相談/50代女性(五反田 鍼灸院)





【本日の目次】






安全な噛みしめ(食いしばり)治療を受けていただくために





50代女性T様より、噛みしめ(食いしばり)の症状でお問い合わせいただきました。




今回の症例では、香庵に来院される前に受けられた無資格者による事故につながりかねない危険な施術を受けられたケースについてご紹介しています。




自分の歯は替えがきかない大事なパーツです。(もちろん全身そうですよね!)

ぜひ施術を受けられる皆さまにも正しい知識を得ていただいて、安全で適切な施術を受けられるところを選択していただきたいと思います。





香庵の噛みしめ(食いしばり)の鍼灸治療は、東洋医学にのっとった鍼灸の治療システムと、噛む動きにかかわる筋肉などの解剖学・生理学などの知識をベースとして治療プログラムを組み立てて行っています。




香庵では歯科医師の方も来院されていらっしゃいます。

折に触れ、香庵で行う噛みしめ(食いしばり)の鍼灸治療についてもご意見をお伺いしています。



また、私自身、かかりつけの歯科医院でも歯科医の先生や歯科助手の方にいろいろと質問してたくさんの的確なお答えやアドバイスをいただいています。




噛みしめ(食いしばり)に関する情報は、症状でお悩みの方や、噛みしめ(食いしばり)の鍼灸治療にご興味をお持ちの鍼灸師の先生方とシェアしたいと考えています。




この記事が、ご自身の口腔内の健康維持にお役立ていただけたらうれしいです。







症状について





50代女性T様。

噛みしめ(食いしばり)の症状でお問い合わせいただきました。




噛みしめ(食いしばり)は10年以上前から自覚している。

起きた時に眉間にシワを寄せて噛みしめ(食いしばり)していたことを毎朝感じる。




4年前に歯の詰め物の処置をしてからかみ合わせに違和感がある。





整体院で受けた施術についてのご相談




噛みしめ(食いしばり)癖があり、顔が大きく見えるように感じていて、1か月前に整体院で男性の整体師から小顔矯正を受けた。



しかし施術後あまり変化が感じられなかったので、そのことを伝えた。




「噛みしめ(食いしばり)があることが原因です」と言われ、T様の口の中に突然、男性整体師が親指を入れ、左右の上の歯の裏側から外側へ向けて強い力で押されたとのこと。




激痛を感じた直後から、さらにかみ合わせがおかしくなった。

特に右上奥歯の歯に噛んだ時の痛みがあるとのこと。




この整体院のホームページには、1回しか来ない人は(治療を受けて回復する)やる気がない人...との文言があり、初めて電話で予約希望を伝えた時に回数券を買うことをすすめられたとのこと。




1回目は様子をみてよさそうだったら続けようかな...(゜-゜)と思っていたT様。




だけど「1回だけ受けようとしている人はやる気がない」と思われて施術をちゃんと受けられなかったらイヤだな...と思い、初回の施術を受ける前に6万円の回数券を購入した、とのこと。




しかし、1回目の施術後、歯に激痛が走り、食事のたびに歯の痛みが続いていて、噛みしめ(食いしばり)症状もひどくなってしまった。




返金できないか整体院に電話したところ「できません。」のひと言で電話を切られてしまったとのことでした。結局、返金はされなかったそうです。










歯の根っこが溶ける?歯根吸収(しこんきゅうしゅう)のリスク




香庵に来院される歯の専門医、歯科医師の方(I 先生)にも今回の症例についてご意見をお伺いしました。




歯科医院で歯並びを良くしようと歯列矯正を行うときは年単位で少しずつ調整しながら行っていきます。それには、医学的な理由があります。その理由の1つに口腔内に起きるリスクを避ける目的があるそうです。







~歯の根っこが溶ける?歯根吸収(しこんきゅうしゅう)のリスク~





歯に強い力を加えると、歯を支えている歯の根っこや歯茎に大きな負荷がかかります。




その反動で歯の根っこが溶けてしまう歯根吸収(しこんきゅうしゅう)が起きることがあるそうです。

場合によっては歯の根っこが半分ぐらい溶けてしまい、歯そのものを支えきれなくなってグラグラと不安定になってしまうこともあるため、細心の注意が必要だとのこと。




そのため歯の矯正治療では、歯根吸収(しこんきゅうしゅう)を最小限にとどめながら治療を行うそうです。




また、歯を支える骨(歯槽骨・しそうこつ)にも負荷がかかると、歯茎が下がり歯の根元が露出してしまう歯肉退縮*という現象が起きることもあります。



*歯肉退縮は歯周病(菌が歯槽骨を溶かす)や強い力による歯磨き(歯茎を傷つけてしまう)、マウスピースなどの器具が合わず炎症をくりかえすなどの原因でも起こります。



歯並びやかみ合わせ、歯の詰め物の違和感などは歯科領域の専門的な知識がある医師のもとでの治療が必要です。







噛みしめ(食いしばり)を徹底解剖!






噛みしめ(食いしばり)のメカニズム




本来、噛みしめ(食いしばり)そのものは悪いものではありません。




頑張ろう!とチカラを出したいとき、ストレスを乗り越えようとするときには、自然と歯を食いしばっているものですね。





重いものを持ったり支えるためにその重さに耐えるときには、ポカーンと口を開けたままよりも、噛みしめた方が力が出るものです。


また、起床時にわざと歯をカチカチと噛みしめることで脳にスイッチが入り、目覚めを促す作用もあります。



噛みしめ(食いしばり)は、身体の中でいろんな反応が起きた結果なのです。






噛みしめ(食いしばり)のメカニズム



1. 上下の歯が触れ合うことで、歯の根っこに張り巡らされている神経を刺激します。


2. 神経はその刺激を「何か頑張らなければいけないこと、耐えなければいけないことがありそうだから力を出さなくちゃ!!!」という情報として脳へ伝えます。


3.脳はその情報を受け取ることで、全身の筋肉に力が入るように命令を出します。


4. 頑張ること、耐えることに身体を適応させて対処できるようにしようとします。


5. その結果、噛みしめ(食いしばり)が起きます。







噛みしめ(食いしばり)症状の問題点




噛みしめ(食いしばり)症状にお悩みの方にとって問題なのは、必要ではないときに噛みしめ(食いしばり)が起きてしまうことではないかと思います。




特に、夜、寝ているとき無意識におきる噛みしめ(食いしばり)は、自分で気づくことができないのでコントロールできませんよね。




朝起きた時に歯や歯の根元の痛みや歯の損傷、顎周囲の痛み、頬から首にかけてのこわばりや疲労感、痛みなどを感じるのも憂鬱な気分になる噛みしめ(食いしばり)の関連症状ではないかと思います。




噛みしめ(食いしばり)症状の改善のためのポイントは、

噛みしめ(食いしばり)のメカニズムが起きる以前のからだの在り方に着目すること。




噛みしめ(食いしばり)症状が起こるからだの在り方とは、噛む動作にかかわる筋肉にコリや疲労がたまると筋肉が縮こまって硬くなり、下顎を引き上げてしまう、という状態です。




香庵の噛みしめ(食いしばり)の鍼灸治療では、この身体の在り方を改善することを目指していきます。






噛みしめ(食いしばり)の治療方法




噛むことに使われる筋肉でメインとなるのが咀嚼筋(そしゃくきん)です。



硬いものをかみ砕くときに使われる咬筋、下あごを引き上げて口を閉じたり顎を後方へ引く動きに使われる側頭筋、そのほか下あごの周りには口の開閉にかかわる筋肉群があります。

また、口から食べ物がこぼれ落ちないように口唇を閉じたり、食べ物が挟まった時には口の奥へ押し出したりする表情筋も働きます。


さらに香庵では噛む動作にかかわるとして、後頭部のエリアにある筋肉も加えて治療対象としています。




解剖学の世界では「噛む」ことに関わる筋肉は、咀嚼筋や一部の表情筋だけと考えられています。

しかし、香庵では、噛みしめ(食いしばり)症状を改善していくときには、後頭部のエリアにある筋肉も治療対象とする必要があると考えています。




たとえばハンバーガーを大きい口を開けてガブリッ!!!とほおばろうとするとき、その直前では一瞬顔が上を向きます。

このとき、首の後ろの筋肉が硬くこっていたり、首の後ろに痛みを感じたりしていると、この姿勢がとりにくくなってしまうのです。




「食べる」動きを解剖学だけでみると、顔が上を向く動きは「無駄な動き」「必要ないもの」なのですが、ハンバーガーを食べるときは一回、顔を上に向けてガブリッ!...ってほおばりたいんですよね(笑)




また、お箸やフォーク、スプーンなどを使って食べるときにも、食べたいものを口に運んで食べるまで頭の動き(首の動き)はかなり複雑な動きをしています。






余談ですが、日本人の中でインド料理にマニアックなほどの偏愛(笑)がある方は、手で直に食べ物を口に運んで食べる「手食」をされたことのある方もいらっしゃると思います(*´▽`*)




「手食」は手づかみで食べるということではなく、インド式の正式なマナーにのっとった食事のお作法があります。(今ではITの普及もあり「手食」をする方はインドでも少なくなっているそうです)



私自身もインドの方にレクチャーを受けながら「手食」を体験したことがあります。

指から伝わってくる食べ物の温かさや柔らかさ、よく煮込まれたお肉や野菜の繊維質な感触と、インド料理のスパイシーな香りが脳の中枢にドーンッ!と刺激になって入ってくる感じでした(笑)




「手食」で食べなれていないこともあったけれど、上半身全体で食べものと向き合っている!!!という感覚はとても強烈な身体感覚として残っています。




身体にとって、「食べる」という行為は、じっとしたまま口だけパカッと開けて、食べ物を口の中に帆織り込んで咀嚼する、というロボットのような動きではないんですね。







「食べる」進化のストーリー





「噛む」という動作は、頭全体が協調して行っています。

その理由は、「食べる」という動作は、そもそも生きるための行為だから。




現代では人間の祖先は700~600万年前からゆっくり進化してきたと考えられています。

でもそのずっともっと前から「食べて」命をつないできているんですよね。




古代にさかのぼると、魚の時代、身体の先端に開いた口から獲物を狙って捕食していました。

身体の端っこ全体は食べるために機能していたのです。




その後、魚は陸へと上がって進化していきました。

哺乳類へと進化する過程で魚の鰓(エラ)を動かしていた筋肉の一部は、食べること・呼吸をすることに変化していきました。




進化した「人間」は、解剖学という「知識」を得ることで、食べるために使う筋肉が頭部の一部分の筋肉であるかのように「認識」するようになりました。




でも、進化の過程をみると、人間の「頭部」にある筋肉グループが、実は獲物を捕食していた時代の器官が変化したもの...なのでした☆




...だいぶマニアックな二億年レベルの進化のストーリーですが、現代を生きる私たちの身体にしっかりと刻まれているんですね~(;^ω^)










香庵の診断・分析






T様の噛みしめ(食いしばり)症状では、下あごが左側に偏って開いて右側へ閉じるというふらつきがありました。




これは口を開けたり閉じたりするときに使われる筋肉のコリ状態に左右差があるということを表しています。




また、噛みしめ(食いしばり)症状が強い状態では、筋肉が下あごを引っ張り上げてしまうため、口を閉じていても下あごの位置が顔の中心線からズレて全体的にゆがんだように見えてしまうのです。








施術内容と経過








筋肉ひとつひとつに鍼を刺されるのか...とちょっと心配される方が時々いらっしゃるのですが、どちらかというと皮ふに鍼をあてるような感じのごく浅い鍼刺激を行っていきます。




その状態で数分お休みいただく間に、噛みしめ(食いしばり)にかかわる筋肉はもちろん、全身の筋肉もゆるんでリラックスできるようなコンディションを作ってまいります。




頭部から首肩周囲の筋肉に、寝ているときには筋肉がリラックスしていたということを思い出し、本来の筋肉のあり方を取り戻すように治療を行っていきます。





T様は、噛みしめ(食いしばり)の鍼灸治療を3ヵ月間で6回受けていただきました。

口の開閉時の下あごのふらつきも軽減し、ほとんど気にならなくなっていかれました。




ただ、歯科医院で4年前に歯の詰め物の処置をして以来、かみ合わせに違和感がある症状をずっとお持ちでした。定期的に歯科医院で処置は受けているものの、そのたびにかみ合わせが気になるとのことでした。




毎回、噛みしめ(食いしばり)の鍼灸治療のために片道、電車で1時間近くかけて来院されていらしたT様。




歯並びやかみ合わせ、歯の詰め物の違和感などは歯科領域の専門的な知識がある医師のもとでの治療が必要だということを改めてお伝えして、今後は歯科医院で歯の治療を行ってはどうかというご提案をしました。




そしてまた、噛みしめ(食いしばり)症状が強く現れるなどお悩みがありましたらご連絡いただくことにしました。




ひとまずT様の噛みしめ(食いしばり)の鍼灸治療は終了となりました。







治療の振り返り・院長より





T様にとって整体院での出来事(歯を強く押されたことや6万円前払いで返金がなかったことなど)は、とてもツラい体験だったと思います。




お身体はどの場所もそうですが、自分の歯には替えがないですよね。

差し歯やブリッジ、入れ歯、インプラントなどの器具を装着するとなると高額な費用がかかってきます。




噛みしめ(食いしばり)症状のある方は、日ごろから歯に圧がかかっているため、歯にひびが入ったり割れたりという損傷が起きやすいようです。




T様が整体院で整体師の方から歯を強く押されたというお話をお伺いしたとき、




T様、歯を折られなくて本当に良かった...!と、本当に思いました!




さらに安全で正しい知識をもとに施術を受けていただくにも歯科医院での専門領域と噛みしめ(食いしばり)の鍼灸治療の違いについて、これからも伝えていく必要があるなぁ、と感じました。





T様が噛みしめ(食いしばり)の鍼灸治療で来院されていらした期間中、ご趣味の編み物のお話を楽しそうにされていらしたのが印象的でした。




仕上がるのが楽しみすぎて、ついついがんばっちゃうのよねぇ~(笑)

だから肩コリも強くなるし、噛みしめ(食いしばり)に影響出ちゃってるかもしれない(;^ω^) と。




でも、モノづくりの楽しさって、夢中になれるパワーがすごいんですよね~!T様にとって噛みしめ(食いしばり)の鍼灸治療が、楽しく編み物を続けられるサポートへとつながっていたらうれしいな、と思いました。





ご利用ありがとうございます。

またのご来院をお待ちいたしております!



 

五反田の鍼灸院 香庵(かのん)について

当院の院長、加藤は国家資格を取得しております ・鍼師(2000年~) ・灸師(2000年~) ・あん摩マッサージ指圧師(2000年~) また、第43回日本伝統鍼灸学会学術大会、世界鍼灸学会連合会学術大会WFASなどにて発表経験もあり、研究成果の発表も行っております。

場所:東京都品川区大崎5-4-7ハイツ五反田203号

五反田駅をご利用の方

JR山手線・都営浅草線 五反田駅西口改札 徒歩5~7分(約500m)




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