【本日の目次】
肩甲骨内側の痛み症状について
肩甲骨内側の痛みでお悩みの50代女性M様。
何軒か鍼灸院へ行き、肩甲骨内側の痛みを相談して治療を希望されたそうです。
でも、すべての鍼灸院で肩甲骨内側の痛みに対する治療を断られたとのことでした。
その理由は、「肩甲骨内側の部位の奥に肺があり、そこに鍼をすると肺にあたってしまう可能性があり事故につながるためできない」とのこと。
しかし、肩甲骨内側の痛みが強く、肩全体も重く感じてじっとしていてもコリを感じるため、とても苦しい思いをされていたM様。
どうにかしたいという気持ちでインターネット検索していたところ、香庵を見つけられたとのことでご相談いただきました。
肩甲骨内側の痛みに関する、香庵の診断・分析
首・肩の筋肉の強いひきつれ感が肩甲骨内側へと広がり、さらに長期間にわたって強いコリがあるまま過ごされていたM様。
M様のご事情で、小さい頃から常に心身ともに緊張しながら生活をしなければならず、全身に力が入っているのが「普通」というような状態だったそうです。
無意識に心身が緊張している状態が長期間続くことで疲労が蓄積した結果、心身のストレスとなり、肩甲骨内側のコリ症状となって現れたと分析しました。
病(やまい)膏肓(こうこう)に入る
肩甲骨内側にある有名なツボに膏肓(こうこう)があります。
「病(やまい)、膏肓に入(い)る」という故事成語が『春秋左氏伝』*に登場します。
*『春秋左氏伝』孔子の編纂と伝えられている歴史書『春秋』の代表的な注釈書の1つで、紀元前700年頃から約250年間の魯国の歴史が書かれている。(ウィキペディア)
「病気が重くなり、治る見込みがなくなる」または「物事に熱中して夢中になり、そこから抜けられなくなること」を意味しています。
ツボとしての「膏肓」は、肩のコリが強いのを長期間ケアしなかったり、適切なケアがされなかったりした結果、強くしつこいコリとなって肩甲骨の内側に反応がでることが多い場所です。
膏肓というツボがある場所は、心臓と肺のエリアが重なる部位で「身体の奥の方が強く凝っている」と感じる方が多いです。
しかし鍼灸治療では、膏肓に届くほど鍼を深く刺すと肺を傷つけてしまう可能性があるため、鍼することを避ける、という絶対的なルールがあります。
M様のお話では、肩甲骨内側のコリを取りたいと他の鍼灸院でご相談されたところ「膏肓に鍼はできないので治療できません」と治療を断られてしまった、とのことでした。
解剖学的な知識をしっかり持っている鍼灸師として肺を傷つけてしまう可能性があるから膏肓に鍼をしない、というのは「正しい」判断なのです。
ただ、本当は、その「正しい」判断をしたうえで、その先には続きがあるのです。
その続きとは・・・
鍼灸師として、東洋医学的に肩甲骨内側エリアを診断する視点を持っているかどうかです。
肩甲骨内側の痛みの治療方法を知るには
ここは鍼灸業界の関係者の方のみへの「肩甲骨内側の痛みへのアプローチ」の情報シェアになります。
業界関係者以外の方が読まれる場合は、ご興味のある方だけ読んでくださいね(*^_^*)
肩甲骨内側の痛みにお悩みで来院される方のお身体には、ある特徴があります。
それは、首から肩、背中(とくに肩甲骨周囲)が、ガチガチに突っ張っていて、呼吸も浅くなっていて、チカラが抜けにくい状態になっていること。
肩甲骨内側の痛み治療をされた経験がある鍼灸師の先生方の中には、同じように感じられたことのある方も多いのではないでしょうか。
鍼灸師になって初めて出会った「肩甲骨内側の痛み」症状
私が鍼灸師になったばかりの頃、ある方から肩甲骨内側の痛みを初めて相談されたとき、私はすごく緊張したのを覚えています。
この記事をもし読まれている鍼灸師の先生がいらっしゃったら、最初の頃、どうでしたか~?(;^ω^)
鍼灸学校での授業や鍼灸の講習会では必ず「肩周囲、とくに肩甲骨内側はすぐ下に肺があるから絶対鍼をしたらダメ!!!」と、とにかく何回も何回も呪文のように言われました。
担当していただいた多くの先生方からは、
鍼灸を受けに来た方に安全に鍼灸治療を受けてもらうためにしっかり学んでください。
絶対、事故を起こさないように充分気を付けてください。
そのためなら、『絶対、鍼したらダメな場所』は何回でも繰り返して言います!!!
・・・と、真剣に教えていただきました。
しかし、実際に鍼灸師の国家資格を取得して臨床の場に出てみると、肩甲骨内側のコリや痛みにお悩みの方に多く出会いました....Σ( ̄ロ ̄lll)
しかも、膏肓(こうこう)のツボを中心としたエリアにコリや痛みを感じている方ばかり...
でも、そこに鍼をすることは、絶対に避けなければならない、という教えがあります。
一体、どうしたらいいんだぁ~~~~~っ!!!(´TωT`)
・・・って、何度思ったことか。
でも、その時持っている知識と技術を駆使して一生懸命治療しよう!と夢中で肩甲骨内側のコリや痛みに対峙していたような思い出があります。
あの時、私に治療を依頼してくださった方は本当に根気強く私の鍼灸師としての成長を見守ってくださっていた方たちばかりで...ありがたいです。
その後、1つ1つの症例をもとに問題意識をもって治療法を調べたり、講習会に参加して講師の先生に質問したりするうちに、肩甲骨内側のコリや痛みへのアプローチがあることを学んでいきました。
さらに、肩甲骨内側のコリや痛み症状が起きるようになった、その方の背景も把握する必要があることに気づき・・・
お身体全体のバランスから整えていく必要性があることも学んでいきました。
「肩甲骨内側の痛み」症状へのアプローチを学ぶには
東洋医学では、肩甲骨内側エリアの診断・治療は、いくつかの方法があります。
どのような方法を使って施術をするかは、肩甲骨内側のコリを含めたお身体全体のバランスを診ながら決める必要があります。
もちろん、肩甲骨内側のコリに直接鍼をすることができないのは解剖学的な観点から変わりません。
その分、鍼灸師には診断力や技術が求められるのが肩甲骨内側のコリ症状なのです。
このように肩甲骨内側のエリアは肺がすぐ下にある部位であり、安易に鍼をすることができないため、確かな知識と技術を持った鍼灸師の先生のもとで講習を受けて治療方法を学ぶ必要があります。
そのような講習会では、講義とともに実際の治療も見て学ぶことができます。
鍼灸師の先生によって得意な治療法や使用する鍼の種類・本数などが違うことも興味深いです。
師弟関係あるか・なしか、で、鍼灸師としての学び方もいろいろです
私自身はとくに師弟関係がない中でいろんな講習会に参加したり、先生方に質問することを繰り返しながら学んできました。その中で経験したことを日々の臨床に活かしています。
でも、鍼灸師を目指したときに師と呼べる方と出会った、という方もいらっしゃると思います。
これは、ある鍼灸師の先生からお聞きしたお話なのですが・・・
師弟関係を築かれている鍼灸師の先生方の中には、よその講習会や他の先生方、勉強会などへの参加を師匠から止められているというケースもあるようです。
そのようなケースでは、師に付いて師の治療方法をガッツリ集中して学び、まずはそこで基礎を叩き込む、という考え方がある...のかもしれませんね。
いずれにしても、西洋医学・東洋医学ともに知識を深めながら技術も磨いていけるといいですね。
肩甲骨内側の痛みの施術内容と経過
「肩甲骨内側の痛みは、このまま変わらないんじゃないか...」と、半ば諦めかけていらっしゃったM様。
まずは仰向け姿勢で、鍼を1か所するごとにM様のおからだは変化するチカラを持っていることを体験していただきました。
心とからだが同時に「あ、変われるんだ!」と実感できると心身の緊張がゆるんできます。
心身の緊張がゆるんでくると深呼吸とともにリラックスできることを感じられるようになります。
胸や背中など肩甲骨があるエリア全体が動きやすくなります。
うつ伏せ姿勢では、背中全体の筋肉のツッパリ感をゆるめるように鍼で刺激をしていきました。
同時に、肩甲骨内側のコリもゆるんでいきました。
もちろん、肩甲骨内側のツボ・膏肓(こうこう)には鍼はしていません。
M様もそれは自覚されていました。
むしろ「いつ、膏肓に鍼を刺すのかな?」と気にされながら施術を受けられていました。
しかし、膏肓に鍼をしないまま、肩甲骨内側のコリがゆるんでいくのを実感されていました。
「膏肓に鍼していないのは分かったのですが、1番気になっていたコリがゆるんでいる~!いつ、どこに鍼をしたんですか!?」
・・・とビックリされていました。
今回の施術は、1つのツボを魔法のように使って肩甲骨内側のコリをゆるめたわけではなく・・・(;^ω^)
今回、そんなM様が鍼灸治療を受けられるスタートの時点から肩甲骨内側のコリがゆるんでいくように心とからだ全体のバランスを整えていきました。
肩甲骨内側のコリがゆるんだことを確認して施術を終了しました。
治療の振り返り・院長より
M様は、肩甲骨内側のコリ症状が現れるほど、心身の緊張が強く、実生活においてもお身体にかなり無理をされていらっしゃいました。
さらに、パソコンや携帯電話の普及に伴い、首・肩のコリはもちろん、肩甲骨内側のエリアまでしつこくて強いコリが広がり悩んでいるという方は増加傾向にあります。
「ただのコリ」として扱うには、肩甲骨内側のエリアのコリは、あまりにも厄介な事情をはらんでいます。
心肺機能の十分な働きを妨げる
睡眠の質を下げる
集中力の低下を引き起こす
ストレスを受けやすくなる
動作を制限させる
・・・など、お身体へ悪影響を与えやすいコリだからです。
M様には、無意識の心身の緊張が起きた時に現れる癖があり、施術中、その癖にも気づいていただきました。
その癖が現れるのは、心身の緊張が起きているサインとして活用していただき、肩甲骨内側の痛みが現れるほど疲れすぎないように気を付けていただくようご提案しました。
正直なところ、今回、M様から肩甲骨内側の痛みの治療をお断りされる鍼灸院があることを知って驚きました~(;^ω^)
肩甲骨内側のコリにお悩みの多くの方が、鍼灸治療を通して本来の柔らかで軽やかなお身体を取り戻し喜んでいただけたら、鍼灸師としてとてもうれしいですね。
そのためにも、解剖学的な知識とともに、東洋医学的な視点を持った鍼灸師の先生方がもっと増えたら頼もしいな、と思います。
M様、また次回のご予約の日にお待ちいたしております。
五反田の鍼灸院 香庵(かのん)について
当院の院長、加藤は国家資格を取得しております
・鍼師(2000年~)
・灸師(2000年~)
・あん摩マッサージ指圧師(2000年~)
また、第43回日本伝統鍼灸学会学術大会、世界鍼灸学会連合会学術大会WFASなどにて発表経験もあり、研究成果の発表も行っております。
場所:東京都品川区大崎5-4-7ハイツ五反田203号
五反田駅をご利用の方
JR山手線・都営浅草線 五反田駅西口改札 徒歩5~7分(約500m)