
【本日の目次】
肩コリの症状でご依頼をいただいた、50代会社員男性T様。
1週間前に初診で来院され鍼灸治療を受けていただきました。
施術後、2回目のご予約をいただきました。
しかし、ご予約日当日、T様が飼っていたペットの葬儀が入ったとのことで、急遽、ご予約日時を1日変更して来院されました。
ペットロス症候群とは
ペットロス(Pet Loss)とは直訳すれば「ペットを失うこと」という意味になります。
「ペットロス症候群」とは、ペットを失いさまざまな感情になることで、心とからだに現れる不調のことを指します。
大切な家族の一員、心の支えとなっていた大きな存在を失うと、多くの方は深い悲しみと寂しさを感じます。
その悲しみや寂しさが深ければ深いほど、涙が止まらなかったり、不眠や食欲不振、だるさや疲労感、元気が出ない、塞ぎがちになる...など、心とからだに様々な症状が現れます。
また、その逆に、怒りっぽくなったり、感情を感じにくくなったり、無口になる...などの症状が現れることもあります。
心とからだに大小さまざまな反応が現れるのは、深い悲しみや寂しさという感情が、心とからだにとって大きなショックを与える感情なので自然なことです。
その反面、あまりにもショックが大きいと、防衛本能が働いて悲しみや寂しさを感じにくくなることもあります。
ペットロス症候群が起きたときは

香庵では、これまでペットを失った方の施術を行ってきました。
多くの方は、日常生活を送るうえで、仕事や外出することがあります。そんなとき、あまり感情を表に出すと不都合なこともあります。
施術中、あえてご自身から「動物の方が先に死ぬのは分かってるのに。」とか、「ペットが死んだくらいでこんなに悲しむのはおかしいですよね。」と仰る方もいらっしゃいました。
もしかしたら、周囲の方からそんなお言葉がけをされたかもしれないです。
でも、ペットをなくしたときに感じる、悲しい、寂しい、という気持ちや、やるせない気持ち、もっと何か自分にできたのではないか、という罪悪感など、いろいろな感情があると思います。
ご本人が感じるすべての感情は、本当の気持ちですよね。だから、その感情は押さえこんでも、消えないものなんですよね。
なぜならば、そのペットをなくしたときの気持ちと、ペットを大事な存在として愛していた気持ちは、同じ量だから、なんです。
こんなに悲しくなるほど、こんなに寂しくなるほど、すごくすごく愛していたんだなぁ~~~!!!
ペットロス症候群が起きる根底には、それだけの大きな愛情を注ぐことができた存在に出会えたからこそ、というものがあるのではないでしょうか。
そこで、香庵からおひとつ提案していることがあります。
ペットロス症候群が起きたときは、もしもできたら、で、いいと思うのですが......
自分には、悲しみと同じくらい大きな愛情があったんだ、ということも、自分自身に感じさせてあげていただきたいな、と思うんです。両方ともご自身の中にある本当の感情なのですから。
ご無理のない範囲で、頑張ることなんてしなくていいと思うので、ご自身の本当の感情を大事にしていただきたいな、と思います。
症状について
ペットロス症候群が起きたとき、まだ悲しみが癒えていない時期に「普通に日常生活を送る(送っているようにがんばる)」ことを続けることもあります。むしろ、そのような方が大多数かもしれませんね。
そんなとき、首や肩は感情を止めるために力が入る部位であるため、強いコリが現れる方は多いです。
その他にもお身体の随所にペットロス症候群によるサインが現れることをこれまで診てきました。
葬儀の翌日、来院されたT様。
T様は、昨日の明け方、飼っていたペットが死んでしまい葬儀を執り行った、ということでした。
一見、普段通りのような雰囲気でお越しくださったのですが......
「親がなくなった時よりも悲しくてすごく泣いてしまいました...。」と寂しそうにおっしゃいました。
もともと首から肩にかけて強くてしつこいコリに悩まれていたT様。
2回目の今回の施術では、初回に主な症状(右の首肩の強いコリ)がある程度、改善された分、首全体や肩の強いコリがあることを感じ取れるようになった、とのことでした。
T様が1番気になっている部位を確認し、ペットロス症候群などのお話もお伝えしながら症状改善に向けての鍼灸治療を進めていくことにしました。
香庵の診断・分析
鍼灸治療の基本診断である脈診・腹診でT様のお身体の全体像を診断しました。
脈診では、深い悲しみを感じた時に現れる、脈のカタチ、というのがあります。今回はとくにその特徴的な「脈のカタチ」が現れていました。
1週間前の脈診をしたときとは違い、弱々しく、からだ全体のエネルギーが奥の方へ引っ込んでしまったような脈でした。(これは、脈拍や血圧とは違い、東洋医学的な診断方法に基づいたものです。)
東洋医学では心とからだはつながっている、と考えます。
心の動きが身体に現れたり、何かを体験すると感情が変化したりするものです。
来院されたT様は、一見、普通に会話されてはいらっしゃいました。
しかし、T様の感じた悲しみや寂しさは、お身体に様々なカタチで現れていました。
施術内容と経過
T様のお悩みの中心である首全体や肩の強いコリをゆるめながら、全体のおからだの左右バランスを整えていきました。
うつ伏せの姿勢になっていただき、鍼灸治療を行いました。
この時、首から肩、お背中全体の筋肉の張り感やとくに強いコリの状態を表しているところ、コリの左右差が大きいところなどをチェックしていきました。
すると、肩甲骨内側エリアからみぞおちの後ろくらいの位置で、背骨の左右の際に痛みの強いコリが現れていました。
このエリアは、感情が深く揺さぶられたとき、とくに深い悲しみや寂しさを感じた時におからだが緊張状態になったときにコリとして現れるところです。
悲しみや寂しさを感じてコリが現れる(お身体が緊張する)のは、自然なことです。
今のT様にとって、その感情を感じきることは、大切なペットをそれだけ愛していたということなのですから。
ただ、肩甲骨内側エリアからみぞおちの後ろくらいの位置で、背骨の左右の際に痛みの強いコリは、自律神経系の乱れを引き起こす原因にもなるので注意が必要です。
とくに、コリが現れている位置から、呼吸や心臓の循環器系や食欲不振などの症状が現れることもあります。
そのため、今回はT様が感じた感情が、おからだに影響を及ぼしすぎて、自律神経系の乱れにまで現れないような施術も行いました。
施術後は、首全体や肩の強いコリがしっかりゆるんだことをT様と一緒に確認しました。
さらに、自律神経系の乱れにつながるようなコリもゆるんでいることを確認し終了しました。
治療の振り返り・院長より
ペットロス症候群の特徴が現れかけていたT様。大きな感情の揺れ動きからお身体の緊張状態を引き起こされていらっしゃいました。
T様ご本人は、初診(1週間前)の施術に引き続き、首や肩のコリを感じていらっしゃいました。
その主訴も含めてペットロス症候群の様々な症状、主に、自律神経系の乱れを引き起こす原因となるコリへの施術が行えたことは、ペットロス症候群の重症化を防ぐことにつながったのではないかと思います。
ペットロス症候群を癒す方法

もともとがんばり屋さんタイプの方の中には、辛い気持ちを何とかしなくてはいけない、と思ってしまったり、明るくがんばろうとしたり、焦ったりする方もいらっしゃるかもしれません。
ペットロス症候群を癒していくためには、プロフェッショナルなサポートを受けるということもの1つの方法です。
心のプロフェッショナルのサポートを受ける
ペットロス症候群が長引いてしまうと、最初は悲しみや落ち込みなどの症状からメンタル面に影響が広がり、うつ症状などが現れることもあるようです。
そのようなときはメンタルクリニックなどで辛い症状を相談してみるのも1つの方法かもしれません。
ペットを亡くした方が語り合う会
また、NPO法人「いのちのケアネットワーク」というところでは、「くぅくぅの会」というペットを亡くした方たちが経験や気持ちを語り合う場があるようです。
大阪公立大学獣医臨床センター特任臨床助教の今井泉さんという方は、動物病院に勤務しながら、NPO法人の活動に携わり、飼い主の心の相談にのっているスペシャリストの方だそうです。
私たちはただただお話を聴きます。NGワードは「その気持ちわかります」。わかった気になってはだめなんです。
「くぅくぅの会のお約束」があります。交通事故で亡くなった子と病気で亡くなった子では、急に亡くなった方が悲しいとか、そんな悲しみ比べはしないで下さいと。話せなければパスでOK。悲しみはそれぞれ、悲しみの表現の仕方もひとりひとり違うのです。
ペットロス症候群で辛い思いをされていらっしゃる方にとって、安心して話せる場に足を運んでみることも1つの方法ではないかと思います。
T様、次回のご予約もいただきありがとうございます。
次回は3回目の鍼灸治療となります。T様の心とからだに寄り添ったメンテナンス・サポートができますよう、準備してお待ちいたしております。
当日は、どうぞお気を付けてお越しくださいませ!
五反田の鍼灸院 香庵(かのん)について

当院の院長、加藤は国家資格を取得しております
・鍼師(2000年~)・灸師(2000年~)・あん摩マッサージ指圧師(2000年~)
また、第43回日本伝統鍼灸学会学術大会、世界鍼灸学会連合会学術大会WFASなどにて発表経験もあり、研究成果の発表も行っております。
場所:東京都品川区大崎5-4-7ハイツ五反田203号
五反田駅をご利用の方
JR山手線・都営浅草線 五反田駅西口改札 徒歩5~7分(約500m)